きたのさやこ成長事務アドベンチャーものがたり3「卒業単位」

きたのさやこ成長事務アドベンチャーものがたり3「卒業単位」

「さてさて、ジムくん」

「はい。」

「それじゃあ、さっきのはなしだよね。自分のイメージをしてみるところ。」

「はい。」

「わたしさっき自分で、話していて気が付いたんだけどさ、ようするに面白い!っていうのはさ、例えば知識とかでいったら、もっともっと知りたい!知りたい!吸収したい!っていう、あの感覚だよね。もう、めちゃくちゃのどが渇いてる時に飲む水、みたいな。ぐんぐんぐんぐんどんどんどんどん!」

「はい、いい気がつきですね。」

「それでいったらさ、今の学問のありようってさ、なんだろう、ほんと、飽食の時代とかいうやつと一緒で、飽学の時代なわけよ。もう、おなかいっぱいなわけよ、べつにほしくないわけよ、今は必要としてないわけよ。必要としてないときに聞くから面白くない。ただそれだけ。内容がどうこうじゃなくて、必要としてない、それにつきると思うの。」

「いい気が付きですね。」

「こころって、いや、これは身体か、からだ、自分ってさ、だませなくてさ、いくら頭で、これやったら卒業できるから!とかいつか役には立つから!って思っても、だめなんだよね。ごまかせないんだよね」

「はい。」

「ほんとはさ、そういう、必要なものを必要なときに取り入れる、みたいな今が無限に広がる時間を過ごせたらいいのだけど、でも、一応「大学卒業」を目標に掲げてしまった今、その道はでも避けて通れなくなったわけで。」

「さやこさんにとって、大学卒業はどれくらい大切なんですか?」

「え?」

「だから、さやこさんにとって、大学卒業は、どれくらい大切なんですか?」

「え?それは、、、、えっと、たしかに、ちゃんと言葉にしたことなかった」

「大学卒業をさやこさんはしたいのですか?」

「えーっと、、うん、まぁ卒業証書もって、大学前で写真とか袴きてとったら親喜びそうだし」

「それは、卒業証書、自分で作って、袴もレンタルして、卒業ごっこでもいいんじゃないんですか?みんなと同じ時期に。」

「ありゃ。そら、そうだ」

「それとも、さやこさんは、大学の中で遊びたいのですか?」

「うん!おもいきり遊びたいよ!おいら、今、吉田寮に住んでてさ、結構、まぁ、コントラバーしゃる、な感じでさ、ほんとは、名前とかだしちゃいけないみたいなんだけど…
でも、おいら、なんかそれ変だなぁって思って。住んでるなら、住んでるで、自分の責任だし、追い出されてたら追い出されたでそれは仕方がないし、というより、当局批判ばかりする人達多いんだけど、おいらは、どっちの味方でもないっていうか…
なんだろう、ひとりひとりの、ストーリーを知りたいと思うな。歴史がどーとか、解釈がどーとか、っていうのもいいけどさ、個人に注目したい。湊さんの生い立ちとか、どうして、こういうスタンスなのか。
オイラ的には、湊さんって学生運動の最後あたりの世代?らしくて、その時に、そうとう、嫌な思いしたんじゃないかなぁって思うんだよね。友達殺された、とか、なんか、ほんと、学生運動している人達とかカオスの状況を許せないって思う体験。そういうのとかも知りたいなぁ…って思ってる」

「そうなんですね。いかにも、さやこさんらしい、問題の見方ですね。どっちの味方でもない。だからそんなに、無防備で名前をさらしたりしてると?」

「いや、まぁ、そういうやつこそ嫌われるんだけど、多分。ただ、なんだろう、人の気持ちによりそいたいだけなの。でも、それは寄り添うともいえるし、離れてるともいえるかぁ・・・
だって闘う気持ちには寄り添ってないもんね。でも怒られたら怖いな、とにかく、怒られたり、心配されたり、するのがいやなんだよ。基本的に自分に自信ないからさ。他人に言われると、すぐ揺らいじゃう。嫌われるのも、ほんとにやだ。おいら、みんなのこと好きだから、、、どんな人に嫌われても嫌だ…」

「そういうことが言えるのは、実際に、人から嫌われたり理不尽なことされてきてない証拠ですね。うん、さやこさんらしくて、私は好きですよ。」

「はい、なんか、ありがとう。そう、さやこらしい、っていいことば。いままでは、なんか、いやだったけれど、これからは「さやこらしい」って言われたら嬉しいような生き方していきたいな。こういう風に個人のきもちを大切にしたい、着目したいと思うにんげんなんだなぁって、最近わかってきた。そういうの興味すっごくあるの。」

「その特性を生かして生きていきたいと」

「うん、そう!そうだ、それで思い出したんだけどさ、さっきの質問」

「それで、さやこさんは大学でなにしたいんですか?」

「うんうん、それ。大学の講義でさ、2回生のときに発達心理というものをとったんだよ。それでさ、あるとき気づいたのだけど、まさしく、私は、それをやってたんだよね。ず~っと、大学入ってから。
昔の自分見返したり、小学校のころ、どうだった、とか、中学校のころどうだった、とか、ともだちに対してはこんなこと思ってた、とか、そういうの全部、文章にしてさ、歌とかにしてさ、創ってたんだよ。で、わたし、それを、とにかく、今までやってきたもの全部まとめて、論文にしたいんだよ!超大作の論文だよ。題名はそうだなぁ『大学までにおける私の発達段階への考察』とか?なんか、面白くないな、ダサい、もっといい名前は、他の人の論文読んだりして、真似するけどさ、とにかく、それで、一人、気になってる先生がいるんだよね。松本先生っていう先生、精神分析の人なんだけど。
こう、大倉先生も好きなんだけど、やっぱりどこか冷めたところがあって、一緒におかしくなってくれないというか、、、わたしは、そういう人よりも、もう、なんかはなしてたら、うんうん、とか言って一緒におかしくなってくれる先生がよくって、松本先生は、そうなってくれる人かなぁ。。。ってちょっと期待してたりして。」

「なら、もう、明確なんですね。さやこさんの中では。」

「うん!話してて気が付いたよ!わたしさ、卒業は、しなくていい、卒業は、親やおばあちゃんを喜ばせたいから。だから、それは、今の3回生の子たちが卒業すること、つまり、来年度か!来年度に私は卒業する。
だって、ヨシケイとかゆほとかがんじとかしょーごくんとか、仲の良い子たくさんいるんだもん!だから、一緒に卒業したいな。でも、あれ、ゆほは休学したから、あと2年だっけ。。?まぁいいや、とにかく、自分で卒業証書、いや、先生とかに作ってもらおうかな、卒業証書作って家族読んで、時計台の楠木の前で記念撮影して、みんなでご飯食べに行く。袴はピンクで、いつものやつ。髪はふたつ結び、大好きなふたつ結びして、写真とる!愛犬もつれてきたら、もっと嬉しいなぁ、うん、連れてこよう。」

「いいですね、イメージがとっても豊かで具体的」

「それで、仲間たちとも記念撮影できたらいい、たぶん、たけおとかも、そうだったはずだよ、だから、絶対写真とってもらおう!ギターもって、あ、ギター、ギターライブしよう、そのとき、きたのさやこ卒業ライブしよう、時計台のところで。ということは、そのころには、ちゃんと、告知したら、ある程度人が集まってくれるぐらいには、なってないといけないのか。いや、でも、それだとなぁ。。。なんか、イメージに不安が伴ってきた」

「そういうときは、たのしくないので、まぁ、そのときの流れで、の策を使いましょう」

「うん、じゃあ、ギターはそのときの流れで、ということにして。」

「はい。」

「それで、単位は別にいらない。」

「はっきりしましたね」

「うん。はっきりした。それで、私が今見つけたいのは、自分のおかしさ、やおもしろさをわかってくれる、先生の存在。それが必要。なんでも、はなしを楽しんで聞いてくれる先生の存在、それが必要。」

「それは、京大じゃないとだめなんですか?」

「いや、京大じゃなくてもいい。今はとりあえず、京大の総人の先生たちにしか思い浮かばないからそういっているけど、芸大とか、でもいいかな。富田先生でもいいけど、富田先生は忙しいかもしれないからなぁ…理想は、なんだろう、おじさんで、アポなしでも喜んで受け入れてくれるような余裕のあるおじさんで、ちょっとなれなれしくてもよくて、ちょっと他の教授たちからは浮いていて、それをわかってて、最初は傷ついてたけど今はもう大丈夫って感じになってる先生で、お酒はほどほど、たばこは少したまに吸う、あたまは髪が薄くて、白髪、かわいくて、生徒たちから、とくに女の子たちから好かれちゃうような教授、わたしのこと、きたのくん、とか、さやこちゃん、とか読んじゃうようなせんせい、まちがっても、きたのさん、とかじゃなくて。」

「なるほど」

「笑わないの?」

「どこに笑うところがあるんですか?」

「だって、そんな先生、いるかって思わない?普通。突っ込まない?そんな、都合のいい話あるかって?」

「都合のいい話、なんじゃなくて、都合は自分でいい方にすすめていくものでしょう?」

「あ、そっか。」

「はい。そんなんで笑うやつらは、ほっとけばいいんです。」

「いや、そういう人達がいてくれるから、世の中は楽しんだよ~!!」

「そうですね、それは、そうでした。ということで、探しましょう。その都合のいいおじさん先生。」

「うん!探してみよう!もし、いなかったら、いなかったで、総人の先生にするわ。」

「いいですね、ちゃんと、いなかった時のことも考えてる」

「うん、落ち込みたくないからもう、死ぬほど、落ち込んできてるからさ、もう、いいんだ。」

 

というわけで、きたのさやことジムは、晴れて自分の卒論を担当してくれる先生を探す旅にでることになった。

 

つづく。