わたしは、もう一回寝ることにしました。ジムと一緒にいると、自分の悩みが、すごく小さいものに思えてくるのです。わたしは、ジムにおやすみを告げて、起きると、もう日が沈みかけていました。
「あれ…いま、何時?」
周りを見渡しますが、ジムはどうやら他の場所へ行ったようです。
私は、布団の上でしばらくぼんやりしていましたが、ふと、あたまの中に、黒と白の鍵盤、食堂の端でひっそりとたたずんでいる、あのピアノのことが思い浮かんできました。
いかなくちゃ。
途中、セブンで板チョコを買って、ビーさんをひっかけて、走ります。熊野寮はわたしの家から5分ほどのところにあります。
寮についた私は、そのまま、ピアノのもとに向かい、そして、二つのピアノ、どちらのふたもあけて、そのちょうど、真ん中、ピアノと正三角形になる場所に椅子を置き、板チョコをかじりながら、その二つのピアノをじっと眺めることにしました。
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「ねぇ、ジム」
「なんですか?」
「あのさ、わたしさ、なんかさ、」
「うん」
「ピアノなんだと思う。」
「ピアノ?」
「うん。ピアノ。それでさ、みんなさ、ピアノ、弾いてるの。」
「ピアノ弾いてる?」
「うん、みんなピアノ弾いてる。」
「そうなんですね。」
「うん。いろんな曲だよ、すきなように、みんな、みんな、みんな、みんな、音を奏でてる」
「わたしさ、ピアノ、ピアノ、ぴあのになりたいな」
つづく