月曜日です。今日からは対面授業なのですが、天気は雨。なにか、いろんなことをその雨が示しているようです。わたしは、11時ごろにおき、雨の中ギターをひいた後、ケーキを食べることにしました。
「ねぇ、ジム。」
「はい。」
「タルトタタンおいしい?」
「はい。とっても。あと、さやこがいれてくれた紅茶もおいしいです。」
「よかった。わたしは、洋ナシのタルトにしたよ。これもおいしい」
「よかったですね。それで、話、とは?」
「えっとさ、ちょっと思ったの。なんかね、いろんなことが、いろんなことが、ぜんぶ、ぜんぶつながってて、悪い、と思っていた状態が実はよい状態と思っていたものと同じで、信じたくないって思っていたものが信じていたものと実は同じで、ダサいって思ってたものがカッコいいと思っていたものと実は同じでさ…」
「はい」
「なんかね、直感を信じようって、思って生きるようになってからさ」
「うん」
「わたし、直感で生きるって、なんだろ、こう活発的でエネルギーが充満していることだと思ってたのさ」
「はい。」
「だけどさ、べつに直感で生きてても、活発的ってわけじゃなくて、あぁ、なにもしたくない、っていうのも直感なんだよ」
「はい」
「あぁ、ケーキ食べたい、とかさ、あぁどうしてこんなに好きなのに一緒になれないんだろう、とかさ」
「はい」
「結局さ、直感で生きてもさ、今までと同じこと感じて、思ったりしてるんだよ」
「はい」
「違うのはさ、その感じるものを、信じることなだけで。」
「はい」
「直感で生きてるとか、なんか人生たのしー!って言ってる人もさ、きっと普通に落ち込んだり、普通に片思いしたり、悩んだりしてんだねきっと、」
「はい。」
「結局さ、わたし、間違ってたんだよ」
「はい」
「世界の見方。今もまちがってるし。」
「はい。」
「これは、こうであるに違いないっていう、そういうイメージとかがさ、いつも、邪魔するっていうか、そのものに気づくのに邪魔するっていうか」
「はい」
「あのこは、わたしのこと嫌いに違いない、とかさ。あの先生は、つまらないに違いない、とかさ」
「はい。でも、その間違いの決めつけによって、わたしたちは、世界を認識している。」
「うん。だから、結局なんにも、まちがってない」
「はい。」
「はぁ。。。。ジム。わたしは、この雨の中、たくさんの学生が憂鬱な気分で学校に向かっているだろうと思うとさ、」
「はい」
「なんだか、安心するよ」
「はい。」
「憂鬱の中にもきっと楽しさがあって、喜びがあって」
「はい。」
「この天気、わたし大好き。」
そうして、さやこは、ジムと二人で、薄暗い部屋の中、一緒にケーキを食べるのでした。
「あ、そういえば、明日始めてバイトしてくるよ。日給の交通整備みたいなやつ。
12時間勤務で1万4千だって」
つづく