「交渉による自由」 富山県立大学伊達慎之助氏インタビュー :学生自治2.0 +α(第二回)

「交渉による自由」 富山県立大学伊達慎之助氏インタビュー :学生自治2.0 +α(第二回)

学生自治2.0+αでは、全国学寮交流会が編纂する雑誌「RYOUTONOMY」から、令和の時代に全国で学生自治を実践している皆様へのインタビュー記事をWeb公開していきます。今回は富山県立大学DXセンター(当時)を舞台に、教職員や地域を主体的に巻き込みつつ学生自治組織を展開している、富山県立大学博士後期課程(当時)の伊達慎之助氏へのインタビュー記事(第二回)です。

第一回はこちらから読めます。

「交渉による自由」 富山県立大学伊達慎之助氏インタビュー :学生自治2.0 +α(第一回) | 千万遍石垣

それでは本編をどうぞ!

(以下、本編)

Q3.富山県立大学が発展する中で、大学周辺を初めとする地域は発展したか。もし発展したならどのように発展したか。

 

伊達:これは難しいですね。まだ新しい取り組みなので、効果がはっきりと現れているわけではないと思います。発展しているとしても、先に述べた新知事体制の恩恵が大きいと思います。

 

KS:大学横にスタバとか出来てるじゃないですか

 

伊達:スタバは出来たんですけど、何故出来たのかは謎ですね(笑)。それはともかくやっぱり政治との距離は近いと思います。例えば富山県立大学ではデータサイエンス学部を作るんですけど、これって県知事の政治判断なんですよ。すごく思い切ったことをしてるんですね。普通まず学科からでしょ。

 

KS:数年前までは工学部のみの単科大学でしたもんね。むっちゃ急な話だったと思うんですけど、設置認可とかどうやったんですか?

 

伊達:超がんばったらしいです。

 

KS:おお。

 

伊達:DXセンターの設立も、前の知事さん(石井知事)が明言してくださったから設立されたんですよね。実は選挙直前の目玉政策だったんです。で、設立は決定してたんですけど、知事が石井知事から新田知事に代替わりしたじゃないですか。

 

KS:もしかしてピンチでしたか?

 

伊達:前の知事のレガシーという形になってしまったのでどうなるかと思っていたんですけど、幸い現知事も非常に協力的で、力強く連携してくださっています。本当によかったと思っていますね。今の例からも分かるように、うちは地方の県立大学なので、県知事を初めとする政治との距離が非常に近いんですよ。医薬品工学科の時もそうでしたよね。

 

KS:確かに。出来た時に県議会の議事録全部読んだ記憶がありますねぇ。

 

伊達:大学と政治の距離が近い環境なんですよね。だからこそ、うちの大学で博士を撮った人間は政治家にならないといけないと思っています。

 

KS:政治かあ。ちょっと話が変わるんですけど、ある種中心人物が熱烈に進めることが何起爆剤になることは、熊野寮の雰囲気と似ていますね。

 

伊達:基本的に中心となる人物がいるとスムーズに進みやすいのかなと思っています。忘れられないのが、ある時に1つ上の先輩にCOCOSの代表の方がいたんですけど(注:COCOSは富山県立大学と地域との協同を主目的とする学生団体。)、「お前たちにはやってやろう感がない。やってやろうという気持ちを忘れないように」と言われたんですよね。そこからやってやろう精神が私の中に生まれたんです。結果としてそれが周りと噛み合ったきっかけになったんですよね。ここからは妄想に近いんですけど、そうしたやってやろう精神が下に伝わって連鎖し始めていると考えています。個人的には学生団体等が定期的に新設されるようになったのは大きいですね。

 

KS:なるほど。

 

伊達:次は博士だと思っています。自由は選択肢の多さだと思っているので、博士をとるという選択肢をもっともっと示したいですね。うちの学科は自分が数十年ぶりぐらいで、いままで課程博士は1人ぐらいしか出ていない。もっともっと後続の博士を増やしたいですね。

 

KS:でもなんというか、博士取ったり起業したりする人間って、周りからはなんか「自分たちと違う人種」みたいに思われちゃったりしませんか?その壁を超えて熱量が伝わりにくいというか…。

 

伊達:それは多いです。自分は「所詮俺は、お前と同じ人間なんだよ」ということを人間関係で示してきました。例えば誰かと遊ぶときに迷ったら、後輩の方を選ぶとかですね。同じ人間だということを体で示す感じです。ただ見えすぎると逆に進まないのかなと思うこともあって…。その辺は今の課題ですね。

 

KS:ふむふむ。けど例えば今の学生さんって、なんというか予定調和の中に生きてる人も多くないですか?インプットが少ないというか、自分と異質な情報や選択肢を知らないというか。

 

伊達:インプットが少ないのは誰のせいか、という話なんですよね。

 

KS:というと?

 

伊達:学生自身の問題なのだと考えるのが大学や社会の考えとしては一般的だと思います。ただ…。そういう学生がなぜインプットを増やさないのいうのも考えないといけないですね。1つにはやはり予定調和が楽だから。自分なんかはインプットしないと冗談抜きで詰んでしまう世界線に生きてるんですけど、インプットなしでもそれなりに生きることは可能になってるんですよね。選択肢がせまい中で生きていけるいい社会であると捉えることもできるんです。マクロで見ると多い選択肢を意識できる人間が多い方が発展するんですけど、ミクロな視点からみると、頑張らないことが個人の利得を増やしているとも言えます。

 

KS:この視点は寮自治のフリーライダー問題(注:マクロに見ると寮自治を主体的に行う人間が多いほど自治空間は発展するが、ミクロに見ると他人の自治にぶら下がることが個人の最適解になる局面もあるという問題)に似ていますね。

 

伊達:目指したいのは、マクロとミクロを制度的に両立させる最適解の構築。全体が発展しないのも個人の利得を追究できないのもちょっとおかしいですね。インプットの欠落に危機感を持ってもらうしかないのかなぁ。ただそれがいい自治なのかは分からないです。危機感と常に隣り合わせっていうのは一般的にいってあんまよくないですよね?

 

KS:まあそれはそうですね。

 

伊達:やはりスター学生が存在することが周りの学生には大事かなと考えています。あと、頑張る人の足を引っ張ることを許さないこと。

 

KS:それだと取り組みの継続性をどう担保するかが課題になりませんか?

 

伊達:熊野寮のことは自分はよく知らないんですけど、長い歴史の中で上手くやってきたとは思います。富山県立大の話をすると、やっぱりダメな年も会ったり、無駄な伝統の形骸化があったりします。そういう意味では継続性なんて存在しなくていい。

 

KS:というと!?

 

伊達:新しい世代が全部決めればいいんですよ。例えばうちでは議事録をみて去年のイベントを参考にすることは禁止しています。いい状態を持続させるのって不可能に近いですよ。時代はこの5年ですら大きくうねっています。時代に合わない組織や伝統を維持し続けることの方が継承されないことよりもよっぽどまずい。理想的には継続してほしいと思う気持ちもあるんですけど、継続性と革新性を兼ね備えた完璧なシステムなんか思いつかなかった。やはり時代にあった組織を目指すには、現役メンバーがむっちゃ頑張るしかないんですよ。

 

KS:意思決定を現場が担うべきだと。

 

伊達:その通りです。例えばうちでは少なくとも最終決定の1つ前までは現場サイドが決定権を持っていて、それが物凄いモチベーションにつながっている。

 

KS:それは自治空間性が非常に高い。

 

伊達:現役メンバーが新しいことを始めればいいんです。学生団体はスクラップアンドビルドできるんですから。

 

KS:実は熊野寮も内部組織は結構スクラップアンドビルドしてます。

 

伊達:そこはうちと近いですね。現状維持って衰退と同じなので。

 

KS:でも最近は管理教育が主流じゃないですか。特に大学当局。熊野寮の自治空間も結構弾圧を受けることがあります。その辺との兼ね合いってどうしてますか?

 

伊達:そういう圧力はありますよ。結構事務局側(富山県立大学の学内事務・経理・総務等を行う部署)とはもめたりしたこともあります。もめた時におとなしく引き下がるか本気で戦うかですね。もちろん相手の方が正しいこともあるのでおとなしく(笑)引くこともあるんですよ。ただガチバトルするかどうかは結局政治力で決まるんですよね。我々は発言ポイントって呼んでるんですけど、恩を売ると発言ポイントが溜まり、強い要求をすると発言ポイントが減る感じです。我々はその発言ポイントを上手くマネジメントして意見を通す感じですね。

 

KS:なるほど。

 

伊達:我々としては、上が決めたことは絶対として、その枠の中での自由度を可能な限りあげて行くイメージです。例えばもっと上に話をつけに行くとかですね。ルールを変えるためには自分が上に行くことも大事だと考えていて、皆がそういうマインドを持つことも重要だと思ってるんですよ。

 

KS:京都大学の例を出すと、例えば全学自治会を再建したりと、実力で権力を奪おうという動きもあります。

 

伊達:京都大学のスポンサーになってしまえばいいんじゃないんですか??政治家や上層部を抑えるぐらいの資金源を手に入れるという手もあると思うんですよ。例えばOPの人たちを頼るとか。もちろんOPが口うるさくなってしまうのはダメで、口は出さずに金をだすみたいな集団になる必要がありますけどね。

 

KS:熊野寮が学術のスポンサーになるという議論は寮内にはあって、例えば分生(日本分子生物学会)には広告を出したりしてますね。

 

伊達:やっぱりやることはすごいなぁ。広告にしても権利を買うっていう発想でしょ?それは凄い。富山県立大学だと大学の成り立ちからして、政治とは県を動かすことなんです。(注:富山県立大学は県内唯一の公立大学であり、富山県庁との結びつきが強い。例えば事務局の職員らは大多数が県庁からの出向である。)

 

KS:県を動かせれば小回り効いたりしませんか?

 

伊達:いやそれは結構理想論だと思いますよ(笑)。県庁の方々の人事システムだと、評価って自分の受け持った仕事をこなせるかだけで決まるんです。要するに業務外のことを頑張るモチベーションが無茶苦茶わきにくい。だって公務員が業務外で頑張っちゃうって、極端にわるく取っちゃえば癒着の元ですからね。

 

KS:あー…。

 

伊達:うちのボスが富山県庁内部でDX関連の役職について仕事してますけど、凄い大変ですよ。あと県議会から県庁に依頼される仕事がかなり多くて、たぶん全体の7割ぐらい占めてるんじゃないかな…。残りの3割で県庁の仕事をこなしているイメージです。なので革新的な業務とか改善にさける労力が現場にあんまり残ってない。

 

KS:なるほど

 

伊達:ここの現実をまともに変えようとすると県知事でも難しいと思っていて、国レベルの事業になると思います。

 

KS:ちょっと甘い発言だったかもしれないですね。

 

伊達:ここ、つまりルール側に文句を言っても仕方ないので、現場としてはルールの中で自由度を高めていくしかないんですね。ルールとまともに戦うと変えなきゃならないことが多すぎる。

 

KS:ここは確かに学生自治寮とは大きく違うところですね。例えば自治寮は法律上存在しないことになっている。新々寮規定もあるし、京都大学の正式な規則では男子の正規学部生しか住めないことになっている。ただ自治寮はそこを実力で跳ね返して、京都大学を舞台に学ぶ人は誰でも住めるようにしてきたという歴史がある。例を挙げると入退寮選考権というものを保持し続けて、誰が寮に住めるかという権限を自分たちで担保している。だから女子学生も留学生も住めるようになった。何か京大から踏み込みがあっても毎回抗議文を提出して戦っている。

 

伊達:凄い。その戦う気概は凄いですよ。

 

KS:やっぱり不当なルールとは断固戦う気概と、自分たちのルールは自分たち当事者が決めるという意思は脈々と受け継がれていますね。

 

伊達:いやわかるんですけど、ちょっと危険すぎませんか(笑)。戦い方としてスマートなのかどうか、自分らとしてはその辺重視してるんですけど、熊野寮さんはちょっとパンチが強すぎるというか…。パンチが強烈すぎません??

 

KS:時には国会答弁まで持ち込まないといけないこともあって、例えばバハドゥールさん(注:他記事参照、バハドゥール氏は招へいに近い形で日本に滞在していた研究者であったが、祖国で内戦がおき帰国不可能、ビザもでなくなった。熊野寮自治会が中心となって居住権を担保し、2012年に永眠されるまで一切の生活を引き受けた)の例とかがそうですね。

 

伊達:(バハドゥールさんを守った件を聞いて)まじか。なるほど…。そのレベルの戦いをするなら強烈なパンチが必要かもしれませんね。必要とあらば国とも戦うのか..。

 

KS:ただ、ルールの中で自由を確保できるのはいいことだと思いますよ。

 

伊達:ルールとバトル両方の面があったほうがいいんじゃないんですか?両方の顔があったほうがいいでしょ。さっきの発言ポイント管理みたいに。

 

KS:そういう側面はあって、例えば新入生歓迎イベントやコロナ下での学生ケアなんかは熊野寮やその他の自治会の関係者が主導しているイメージですね。

 

伊達:そういうのもあるのはいいですね。

 

KS:組織の中で上手くやるにはそういうのも大事なんです。

 

伊達:まさに政治。政治力の話になってくるんですよ。我々が学生自治のために学ぶべきなのは人を動かす政治のやり方じゃないですか??

 

KS:まさにそう。例えば学部生から博士課程学生までいる中で相手に通じる話し方をするのはとても大変だったりします。

 

伊達:組織運営の難しさですね。あちらをたてればこちらが立たずというか。

 

KS:人間関係でやっていくしかない部分もありますよね。

 

伊達:絶対的なグランドルールがあるといいですよね。死守すべき目標みたいなものがあって、その上での自由じゃないと放縦になってしまわないですか?

 

KS:熊野寮はそこはやりやすくて「安価な学生自治寮を守り抜く」という絶対のルールがあります。

 

伊達:それはやりやすいですね。もしかしてみんなが熊野寮を守るためにいろんな派閥が寮内でできたりしますか??

 

KS:そうそう!!その辺が熊野寮の強さである多様性を担保している感じです。

 

Q4.地域と学生との連携に関して大学として工夫していることや、学生目線から役にたっていると思えることはあるか。

 

伊達:工夫としてはやはりDXセンターという箱があるのが大きいです。間違いなく地域との連携面は加速できていると思います。イベント開催とかコワーキングスペースとか、企業の人が日常的に来てくださるので、物理的に絡みやすいんです。ちょうど12/21日(注:インタビューの翌々日)に開催するDXセンターのオープンハウスというのがありまして、そこで学生と企業が連携して課題解決を行うイベントがあるんですよ。学生と企業がガチで連携して課題解決を行うイベントで、学生の成長にも寄与できる良策だと思ってます。ぶっちゃけイベント発案者は大学じゃなくて私たちなんですけどね(笑)。

 

KS:富山県立大学の学生は全国各地から来ていると思うんですけど、どうやって地域と連携させているんですか?もともと富山県には縁もゆかりもない人も多いですよね??

 

伊達:やっぱり箱の存在は大きいですよ。

 

KS:その辺も自治空間性が高いというか、寮に似てますね。

 

伊達:たとえばオープンハウスでは、企業(現在4社が参加)と研究室にはいったばかりの3年生(注:富山県立大学では3年生から研究室に配属される)がチームを組んで、デジタルな課題を2カ月かけて解決して発表するんです。この過程で地域の人々との協同が仕込まれていて、地域と関われる仕組みになっています。現地にヒアリングにいったりとか、学生が合宿を開催したりするとか。コンペティション形式でもあるので、学生さんはみんな必死に取り組んでいますね。

 

KS:それはすごい。

 

伊達:今はまだ実験的な取り組みなんですけど、これが上手くはまれば凄いと思うんですよ。どんどん拡大できればと思っています。あと研究室としてはブートキャンプの意味合いがあって、研究室に入ったばかりの学生が死ぬ気で頑張ることになるんですよね。もちろん学生の中にはプログラミングをするのが初めてという学生さんもいるんですけど、その辺の技術的な支援は修士課程のメンターさんがついています。その状態で学生主体で真剣にやる感じですね。

 

KS:むちゃくちゃ力はつきそうですね。

 

伊達:前身のイベントは学生同士のアイデアを形にするコンペだったんですけど、これを拡大して地域の課題をガチで解決できるようにしよう、と。最初の1~2カ月に真剣にプロジェクトに取り組む。このブートキャンプでやっぱり覚醒するんですよ。これは意味があるな、と。

 

KS:これはオルグですね(笑)

 

伊達:そうですね、今後の展開としては、DXセンターを通して、自分の研究に合わせて企業を呼べるようになればいいと思っています。

 

KS:コミュニティを大学の中で作る。自治ですねぇ。

 

伊達:利害関係がやっぱりあったり、大変なところはいろいろと大変だったりするんですけどね。

 

KS:箱の存在は大事ですよね。熊野寮自治会も寮という箱があるから60年近く続いてきた。

 

伊達:マジで大事です。DXセンターが出来るときには悲喜こもごもがあったんですけど、出来上がってみると結構いい感じですよ。もっともっと多くの教員にDXセンターを活用してほしいですね。そのために連携教員という制度が作られたりもしています。

 

Q5.その他学生と大学教職員との距離感や、学長などの大学執行部との距離感に関して

 

伊達:結構語ってきた気もするんですけど、弊研究室が特別距離感の近い研究室だと思うので一概には言えないと思います。その点を踏まえた上でお話させてもらってもいいですか?

 

KS:もちろんです。

 

伊達:そうですね。自分たちが研究室のボスと近い距離感で話せることで、他の教員(学長を含め)や事務局との距離感も同様に近くなっているので、学生自治という文脈においてはわりと重要ではないかと思います。

 

KS:なるほど

 

伊達:やっぱり先生と仲良くなる。本当に仲良くなるんですよ先生と目指す関係性が同じかどうかというのは関係性構築に効いてくるとは思うんですよね。先生と一緒にゲームしたり、遊びに誘ったり。教員は友人でもあり、自分たちのボスでもあり、超えるべきライバルでもあります。そういう関係を教員の側も目指していて、最近のゲームとか勉強してたりするんですよ。ただやっぱりそういう関係性ってうちの大学でもすごい特殊で、それぞれの教員によってパーソナルスペースとか適切な距離感とかはやっぱり違うと思います。ミクロな視点ではうちの研究室は正解だったと思ってますけど、絶対の正解はないかなと。

 

KS:そうですね。距離が近いラボがあることによって、隣のラボでの学生ー教職員の距離とか、事務局と現場側の距離とか、そういうのが近くなる波及効果ってありますか?

 

伊達:自分の場合は教員を通じて他の研究室の教員とは仲良くなっていますね。助教の先生たちとはマブタチですよ。もちろん事務局さんとも仲良くさせてもらってるんですけど、やはり3年程度で人事異動で県庁に戻っちゃいますからね。いろんな人がいろんな部署から来てるので、合う合わないはどうしてもありますねー。やっぱり事務局側としても3年の年限で来てるので、ここはシステム上の問題もあるかなぁと思います。

 

KS:なるほどです。それではここらでインタビューの方を終わらせていただきます。

 

伊達:まああくまで個人的な感想によるところも多いんですけどね(笑)。お役にたてたのであれば幸いです。

 

インタビューは非常に和やかに進んだ。体制の中で政治と協力しながら自治空間の確立を目指す伊達氏のあり方は、今後の学生自治の進め方として1つのモデルケースになるだろう。もちろん熊野寮自治会とは、権力との距離の取り方やルールへの考え方など異なる点もある。一方で、現場が意思決定権を持つことの重要性や自由を担保する必要性など、共通点も数多く存在することに気付かれた方も多いと思う。

 学生自治は一部の大学の特権でもなければ、自分たちには縁遠いものでもない自分たちで空間を手作りするための手段であり、プラクティカルガイドなのだ。そして、自治空間は大学の中で完結するものでもない。京都大学熊野寮が地域の飲食店やお祭りと積極的に連携してきた歴史や地域住民の中で風景として愛されてきた歴史、金沢大学泉学寮が野町の方々と連帯してきた歴史、富山県立大学が地元企業や県庁と共に発展してきた歴史、これらを鑑みても明らかであるように、自治空間は地元の空間と地続きであるものであり、そういう意味であなたの空間でもあるのだ。大学に縁がないそこのあなたも、ぜひ一度地元の大学を訪れてみてほしい。そこに自治空間が生まれようとしていれば、是非とも応援してみてほしい。そこに活力の源があると思う。

 最後に、メールでの事前取材に加えて、2時間弱に及ぶインタビューに快く応じてくださった伊達氏に改めて感謝したいと思う。(本インタビューは当日のインタビューに加えメール取材の内容を加味し再構成したものです。)

 

 

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