組織を運営していると、必ずといっていいほど「フリーライダーを排除したいです」と聞かれる。中にはトンデモない熱量を傾けるリーダーがいて、組織の存在意義がもはや「目標の達成」から「フリーライダー排除」にすり替わってないかと思えるほどの執着を見せる。なんで働いてるんや…???
特に自治空間では人的・金銭的リソースがただでさえ乏しいのに、フリーライダーのせいで勤労意欲が下がればリソースが二重の意味で浪費されると熱弁する人を多数見てきた。ベンチャーや新規事業部門でも同様である。フリーライダーにつかう金や時間があれば仕事をする人間に使いたい。理屈は通っている。ただそんな組織は往々にして荒廃し・当初の気体を遙かに下回るアウトプットしか出せず、短期間で雲散霧消していく。資金規模や人的リソースによらずである。なぜか?
結論から言おう。フリーライダーは「営業」という、普通の企業ならそれだけで下手すりゃ二千万円ぐらいは稼げる仕事をタダでやってくれているのである。すなわち、フリーライダーこそが人を集めて、場を作り、運営の候補者を集めるという構造があるのである。
そもそも前提として、最初から「運営をしたい」と思って組織に入ってくる人間はいない。多くの人間は金銭的・人脈・やりがい・好奇心を満たすこと等の、何かユーザーとして享受できるメリットのために組織に入ってくる。メリットのない組織の運営を行う人間はいない。そしてしばらくユーザーとして活動し、組織の社会的意味を十分に理解し、存続させるべきだと思った人がー実際にはそのうちのごく少数がー運営を「やってもいいかな」と思う(注1)。これが自然の理である。
一方で運営というのは極めて大事かつ往々にして激務であり、一人の人間がそう長くできるものではない。ピラミッド型の組織あれば偉くなるほどサポート人材をつけるといった手法でカバーできるかもしれないが、自治空間などのフラットさと機動力を売りにする組織であればこの手法は比較的取りずらい。いきおい運営(の一部であっても)を任せられる人材の価値はうなぎ上りとなり、新人にいきなり運営をやらせてみる場合が増える。但しその場合、メリットを感じる前に激務となるので、辞めてしまう場合が非常に多い。そうなると例え自治空間と言えどもガッタガタになってしまう。営利企業などの取引先がある組織の場合はさらにひどく、ブラック化まっしぐらである。そうなると人が入ってこなくなり存続に関わる。
この失敗パターンを回避してくれるのが、フリーライダーである。ここまでフリーライダーの定義についてはあまり明示してこなかったが、ここでは「組織が運営のために必要だと定義した仕事や対価の支払いをあまり行わず、自分たちのしたいことを自分たちの解釈に従って行うために組織のリソースを使い楽しむ人たち」と定義しよう。一見するとクズである。しかしながら、組織の中でフリーライダーをよく見ると、組織を安定させる糊のようなふるまいをしているのだ。
第一に、楽しそうである。運営の激務から解放されて気ままに楽しむ彼ら彼女らは、訴求力がある。もちろん運営には運営の楽しさがあるのだが、それを観客として味わえるのは構成員になってしばらくしてからだろう。
第二に、内外とコミュニケーションをとる傾向にある。そりゃあ辛いことを全部他人にまかせているのだから時間ありまくりである。楽しんでいるのだから相手も楽しいだろうとおもって積極的に話しかける。リソースについても執着が比較的ないからどんどん外部に開放したりする。そうなると空間の外面がよくなり、他の人も活動しやすくなる。新しい人たちとの接点もどんどんできていく。
第三に、新人の滞留率を上げる。そりゃあしんどそうな人が多い場所と楽しそうな人が多い場所なら、誰だって後者にいたい。それに大体、新人の多くは楽しみ方すらわからないのである。空間をどう運営するかよりも、空間をどうやって楽しむかを先に教えるのが筋である。特に自治空間の場合「空間をどうつかうか自分たちで決めれられる」というのは一つの売りである。売りを実際に具現化しているのは訴求力が大きい。
すなわち、フリーライダーというのは空間や組織の営業マンなのだ。そりゃあ経理も総務も企画もあまりやらないかもしれないが、どう考えても組織を新人(や外部のあまり詳しくない人)に売り込んでいる。タダで営業をやってくれる、すごく得難い人材なのである。逆にフリーライダーがいなければ、こうした役割を担う人間がいなくなるか、運営や真面目な活動でいっぱいいっぱいの人に負担がのしかかるわけである。そりゃあ、しんどくなるだろう。
フリーライダーにカリカリする人も、上記のように考え方をかえて「ああ、この人たちは仕事してくれてるんだな」と思ってみてはどうだろうか。そしてフリーライダーが獲得してきた人材のなかで楽しんでいる人を見つけて、運営を少しづつ任せてみるといいだろう。人は惰性の生き物であり、多少負担が増えたからといって今までの仕事をすぐに変えたりすることはない。それに、数名に一人でも運営に回ってくれたら(注2)、空間の維持発展には十分すぎるぐらいである。
さあ、全力でフリーライダーを褒め称えよう!!
注1.自治空間だろうが民間企業だろうが(この二つは実は相反するものではないが)この構図は変わらない。最初から組織の運営に本当に関わりたいと思う新入社員はまずいない。いたとしても「出世してえなぁ」ぐらいの漠然とした願望である場合か「デカい金を動かしたい」等の、権限を渇望しているに過ぎない場合が大半であろう。
注2.実際にはもっと少なくていいと思う。

