“彼女”にフラれた話

“彼女”にフラれた話

私は先日、”彼女”にフラれた。

それは、あっという間の事であった。本人とも直接会って話すことも叶わず、友人を介して絶交を告げられた。

 

“彼女”との出会いは、3年前の夏のことだった。

サークルの花火大会に参加し、そこで”彼女”と初めて知り合った。そこで見た、”彼女”の行動は非常に奇妙であった。鴨川で花火をし終えると、真っ先に川の中に入っていき、水をこちらにかけてきたのだった。この行動には何も意味が無い、ただのイタズラだろう。

そこで、私が見た”彼女”の表情に、好感を覚えた。そこには恋愛の情は無く、ただ友人として仲良くしたいという思い、それだけであった。

 

私は”彼女”と遊ぶようになった。

“彼女”と一度接触してみると、やはりどこか変わっていた。いや、“変わっている”ように見せていた、と言うべきであろうか。

“彼女”は自ら率先して、奇妙な企画を立てては実行した。そうした企画に、私は暇の許す限り参加した。”彼女”の立てる企画は、そのほとんどが「面白い」ものであった。私は企画に参加するたび、ますます”彼女”への好感を増していった。

 

出会ってから半年後、今から2年前の頃、”彼女”とシェアハウスを始めた。

6人でのシェアハウスだったので、私と”彼女”の2人きりという訳では無い。だが、私は”彼女”との距離感を縮められることに、少し喜びを感じた。

 

“彼女”とシェアハウスを始めてから1年が経った。

私と”彼女”の心の距離は、気付けばかなり遠くなっていた。単純に私と”彼女”で生活スタイルが合わなかった。

私は非常に鈍感で、多少汚くとも気にしなかった。それに対し、”彼女”は潔癖症であり、どんな汚れも「悪」として、許容することはなかった。こんな2人の相性が良い訳もなく、私が粗相をするたびに、”彼女”の気分を害した。

ただ私も何もしなかった訳ではない。”彼女”を不快にさせる行動をする度に、可能な限り、その行動を直そうとはした。私は完璧ではない。全ての悪い部分を直すことはできなかった。だが、努力はしたとは思う。

 

シェアハウスを始めて丸2年、私はシェアハウスを出ることにした。

無頓着な私には、集団生活を送ることは不可能なのかもしれない、と思い始めた。2年目になっても、私は”彼女”に「迷惑」をかけ続けてしまった。ここまで来ると、私は”彼女”と話すことも難しくなり、自分の心からは”彼女”が見えなくなった。

“彼女”とはルームメイトであることは不可能だとわかった。ただ、どうしても”彼女”とは仲直りがしたかった。せめて、友人としてやっていくことができないかと。

 

私は共通の友人を介して、”彼女”との仲直りを図った。まずは、対話のテーブルに着くことから始めようとした。

だが、現実は想定外の方向に向かった。”彼女”は私と仲直りすることを拒否した。それは”彼女”から直接言われることも無く、友人を介して知らされた。仲直りのための対話をすることすら、拒否された。

 

その時、私は狂った。悲しくもあり、苦しくもあり、怒りもした。

どうして、何も話してくれないんだ。どうして、仲直りをしてくれないんだ。どうして、友人としてやり直せないんだ。どうして…どうして…どうして……

“彼女”には私の声が届くことはもう無くなった。何を言っても闇の中に吸われてしまう。もはや、為す術は私に残されていなかった。私は何もできず、叫ぶことしかできなかった。

ただ、友人としてやっていきたいだけなのに。ただ、過去の罪を謝ってやり直したいだけなのに。私の嘆きは、どこともわからず飛んでいった。

 

私は先日”彼女”にフラれた。

何もできず、何も動けない。頭の中に浮かんだ文字を、キーボードで具現化するほか無かった。さて、これを書き終えたら、どこへ行こうか。上へ行こうか、それとも下へ行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、そもそも、彼女なんかいないんですけど(クソオチ)。