・贈与互酬関係、そして愛
上海から昆明に向かう鈍行列車の硬臥で、横のブースにいた中国人から声をかけられた。何かを求めていることはわかったが、具体的に何を言っているのか全くわからなかったので翻訳アプリを用いようとしたところ、彼は私が外国人であることに気づいた。彼は諦めて自分のブースに戻った。置物網から行李を取り出し、卫生纸をこちらに見せて、そのままトイレに向かって行った。なるほどなあなどと思っていたら彼は帰ってきて、車内販売で購入した果物をくれた。どういう意図で果物を貰ったのかわからなかったので、私も購入した果物を渡した。2~3回ほどの「受け取ってくれ」「いやもらえない」のやり取りを繰り返した後、彼は渋々その果物を受け取ってくれた。
彼と私の行動が儒教文化圏でありメンツを重視する国の人だから生じたものなのか、あるいはたまたま彼と私がそう振る舞いたかっただけなのかはよくわからない。返報性の原理のようなものは、人間に本来備わったものであろうか、あるいは社会的倫理や規範に溶け込んでいるのだろうか。
その時読んでた本に夢中だったので会話する気になれなかったが、聞いてみればよかったなあ。
さて、愛とはすなわち贈与互酬関係の拡張概念だと考える。ここでは非常に単純化して、自分そして相手の二人の間に発生する愛について考えてみよう。
自分と相手を同一化すると、自分と相手によって構成される一つの共同体という系で見ることができる。そうすると、「自分≒相手≒共同体」という等式に人間の関係を捉えることができる。そして愛とは、自分・相手・共同体の三つに対して常に贈与互酬関係を働かせ続けることだと考える。つまり相手に何かをすることが自分の利益であると同時に、自分と相手で構成される共同体の利益となるすべての振る舞いを愛と呼ぶのであろう。

