トーキョーオリンピック 開会式 part(2/3)

トーキョーオリンピック 開会式 part(2/3)

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トーキョーオリンピック 開会式 part(1/3)
最後のランナーに聖火が渡された瞬間、被っていたフードが風で捲れて最終走者の御尊顔があらわになる。徐々に大きくなる会場のどよめきが最大限に達したその時、観客席にい…
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最後から4番目のランナーの二木谷浩史から、後澤友作へとその火が受け渡された瞬間、国立競技場に設置された巨大モニターと、入場時に観客一人一人に手渡されたPanasanic製のタブレットの画面が唐突に輝きだす。青く輝く地球をバックに、宇宙服に身を包んだスキンヘッド姿の米国人が映しだされた。会場が騒然とする中、宇宙船から飛び降りる米国人。自由落下に身を任せた男はみるみるスピードを上げていく。画面端には『現在の高度:90000フィート 現在の速度:700マイル』と記されている。徐々に減る値と反比例するように大きくなる背景の地球。3分を過ぎたあたりで真っ黒だった宇宙は青い空へと変化し地上の東京の街並みがはっきりと分かるようになる。パラシュートを開いてスピードが緩やかになったところで男がようやく口を開く。自分が多国籍EC企業の創業者であり元CEOだということ、自分の投資する宇宙開発企業の有人飛行船を用いて成層圏からのダイビングに成功したということ、日本にこうして入国できることに強い喜びを感じているなどということを首元のマイクを通して述べた。

そうこうしているうちにパラシュートは新国立競技場へとどんどん高度を落としていき、ついに男はスタジアム中央に降り立った。子正義から聖火を受け取り、聖火台に向けて最後のランが始まる。その時であった。

「ブルジョワジーに加担するオリンピックを粉砕する!」

突然、会場中のスピーカーから図太い声のアジテーションが鳴り響く。

「繰り返す!コロナ禍において職を失い、今日を生きることさえもままならない労働者階級がいる中で、税金を無駄遣いしてまで一部の特権階級のみが潤うオリンピックの開催など言語道断!ブルジョワジーに加担するオリンピックを粉砕する!万国のプロレタリアートよ、団結せよ!」

様々な色のヘルメットとサングラスを付け、口元をバンダナで覆い細長い角棒を持った男たちが、スタジアムのあちこちで立ち上がった。ざっと数えただけでも3000人はいるだろうか。あるものは競技場に向かって火炎瓶を投げ込み、あるものは入口にバリケードを築いて突入せんとする機動隊と小競り合いを起こし、あるものは観客に向かってカンパを呼びかけた。「がんばれよ」と多額のカンパをする者が多数現れ、「あの頃を思い出すわい」と近くに転がる角棒を手に取る者も多数現れた。「共産主義革命は本意ではないが、わが国の国民の抑圧の解放に刺激を与えるためにも…」ととある国の国民も立ち上がる。「5.18の悪夢を繰り返させるな!」「黄色い雨傘を掲げろ!」あちこちでラ・マルセイエーズやワルシャワ労働歌が歌われ混乱は最高潮に達する。

外からの「今すぐ全員国立競技場から退避すること!さもなければ米軍による空爆が始まる!」というトラメガの声は中の人々には当然伝わらない。

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その10分前のことだ。機動隊の突入が阻まれ、鉄球での新国立競技場の破壊も上手くいかず、手も足もでなくなった警視庁対策本部に政府から一本の電話が入る。

「この状況が全世界に放映されていることにアメリカが激怒している。30分以内に騒動を収めることができないならば横須賀の飛行機で空爆を行う。無関係な人を全員明治神宮と新宿御苑に二手に分けて避難させるよう指示を出せとのことだ。」

「バカ言え!国民を守るのが国を守る者の仕事だろうが!30分で全員避難できるわけがない…まだアメリカ人もスタジアムに残っているのに手を出してない国民に攻撃する軍隊がどこにある!厳重に抗議しろ!」対策本部に怒号が響く。

「確かにあのスタジアムの形状に爆弾を空からぶち込むのは用易そうですね…まるでトイレに排泄するみたいに」

「バカなことを言ってる場合か…何か手立てはないものか…」

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会場ではだれが指揮するでもなくインターナショナルの大合唱が始まった。そんな中飛行機のプロペラ音とともに、空から黒い影が近づいてくる。スタジアムの中心の大爆発の様子が視界に入った。衝撃が来るまで少しのラグがー

 

Part3は後ほど公開