【連載】コロナ禍の京大1回生 #3 -1回生をつなげる会-

【連載】コロナ禍の京大1回生 #3 -1回生をつなげる会-

3.学生の自主的なつながり

編集 しょとう

 

新型コロナウイルスの影響による活動の大幅な制限により、大学生は人間関係を構築する上では厳しい状況に晒された。このような状況下において、京大生たちはどのようにして交友を広げていったのだろうか。

 

SNSの活用

 

対面での交流が制限されたため、オンライン上での交流が可能となるSNSは重要な役割を果たすようになった。特に匿名や非公開で利用可能であり、気軽に自らの意見を発信する事ができるTwitterは対面でのコミュニティに代わるものとして大いに活用された。

 

鴨川デルタ

鴨川デルタ

 

 

TwitterなどのSNS上の関係から知り合った後に、待ち合わせて実際に対面する「エンカ」と呼ばれる行為は鴨川デルタや学食などでよく行われた。特に6月中旬にはTwitter上の呼びかけがきっかけとなって鴨川デルタに数十人規模で人が集まり賛否の論を巻き起こした。

 

ただ会うだけではなく、何らかのイベントを企画してSNS上で人を募集する動きも多く見られた。

これらの企画は学生同士で交流する貴重な機会となった。しかし企画に参加することはある程度の勇気が必要なことであり、参加してつながりを深めた人と参加できず依然として孤立状態にある人が生じた。積極的な姿勢を持てたかどうかが明暗を分けたと言えるだろう。

 

与えられた枠組みの活用

 

学部や学科、クラスといった大学側によって与えられた枠組みを活用した交流も多く行われた。

学部・学科やクラスなどではそれぞれLINEグループが設けられ、これを利用してZoom交流会も頻繁に行われた。学部や学科、クラスのような枠組みの中であるため前述のようなTwitterなどを起点とした不特定多数による交流に抵抗感がある人にも受け入れられ易く、多くの人が参加した。

後期中の11月には大学によってクラスを基本とした対面での交流を促進すべく「きずな・つながり自習室」が設けられた。全体としてみると稼働率は低かったが、一部の学生はこれを積極的に活用していたようである。

例えば農学部の3,4組ではLINEやTwitterでの呼びかけによって多くの学生が集い、対面交流の機会として利用された。

下宿している学生は直接会って交流することが比較的自由にできたが、実家から大学に通う学生はどうしても物理的な距離やコロナ感染のリスクからそうした機会を得ることが難しい。このような実家勢-下宿勢の間の隔たりは学生がつながる上で大きな障壁となっていたものである。そのため実家勢が参加しやすい大学から公式に認められた対面交流の場は貴重な価値を備えていた。

 

サークル活動

 

例年であれば多くの学生のコミュニティの中心となる存在であるサークルであるが、2020年度は様相が異なる。対面新歓やサークル活動はコロナ禍において制限を余儀なくされたため、多くの一回生にとってサークルに入る・活動するというのはハードルの高いものとなった。

 

以下はTwitter上で行った京大生に対するアンケートの結果である。

1回生をつなげる会

@2020tunagerukai

·2021年3月3日

【コロナ禍での京大1回生の記録】

@京大1回生

2021年3月時点で、あなたはサークルに所属していますか?

・所属している(62.7%)

・所属していない(37.3%)

計 394票

 

1回生をつなげる会

@2020tunagerukai

·2021年3月3日

【コロナ禍での京大1回生の記録】

@サークルに所属している京大1回生

サークルにどの程度参加していますか?

・ほぼ毎回参加している(33.2%)

・数回に一回は参加している(20.6%)

・大事な会合には顔を出すようにしている(8.5%)

・籍だけ置いている(37.7%)

計 199票

 

1回生をつなげる会

@2020tunagerukai

·2021年3月3日

【コロナ禍での京大1回生の記録】

@サークルに所属していない京大1回生

サークルに入らない理由を教えてください

・新歓で雰囲気を確かめられなかったから(41%)

・コロナ禍で活動がないから(20.1%)

・その他(27.8%)

・そもそも入る気がない(11.1%)

計 144票

 

結果から、全体の約6割がサークルに入っている事がわかる。またそのうち活動にある程度参加している(数回に一回以上)人の割合は5割程度である。これを多いとみるか少ないとみるかは意見の分かれる所であるが、前述のように対面新歓や活動に対する厳しい規制の下であった状況を鑑みると、ある程度は評価に値する数字なのではないだろうか。コロナ禍でサークルへの制約やサークル文化の衰退が叫ばれている中であっても、オンライン新歓等を利用してサークルに加入し、居場所を築きあげる事ができた人々も一定数は確かに存在する。

 

また2020年度の一回生のサークルに対する動きとしては次のようなものも特徴的である。

既存のサークルに入れないのであれば自ら作ってしまおうといった考えのもと、一回生の中には新しくサークルを作る例が幾つか見られた。対面での活動が規制されているが故に、むしろTwitter上に多くの京大生が集まり人を集めやすかったことがこのような動きを加速させたのであろう。

 

コロナによる厳しい制限の影響を受け、サークルの活動には大きな困難が生じた。そうした状況であっても、サークルに加入して活動に参加したり、はたまた自分たちでサークルを立ち上げたりするなどして積極的に行動することでサークルを活用する学生も存在した。本来の姿からは程遠いが、学生たちを「つなげる」役割としてのサークルは一定の役割を果たしたのではないだろうか

 

 

自主ゼミ

 

@yu_Alekhine_Nf6

テスト終わってからの話だけど, 進化ゼミ(仮)的なゼミとかやったら需要ありますかね。現学部1年を中心に。普段の昆虫だけみたいなのではなく, 植物や菌類とかも含めて

 

またSNSでの人の集めやすさを利用して、多くの自主ゼミが開かれたことも見逃せない。

オンライン授業の下では特定の興味・学問分野を持つ学生同士が集まって議論を行う場が失われた。同回生と学問的な交流を行うことは非常に価値のあるものであり、自主ゼミはこのような機会を獲得するための手段として盛んに行われた。

 

まとめ

 

本年度の一回生のつながりを語る上ではSNSの活用は外せない。単なる交流から企画、ゼミ、サークルに至るまで、多くの活動がTwitterやLINE上を主として行われた。Twitterやクラス・学部のLINEグループなどを通して知り合い、時にはzoomによる交流を挟んで、対面での人間関係へと発展させる一連の流れは例年にはほとんど見られなかったものである。対面→SNSの順でつながるのではなく、SNS→対面の順につながる事例が数多く見られた事が本年度の最大の特徴と言えるだろう。

 

また学生同士のつながりを築き上げる上げるため、例年以上に主体性が要求された年となった。オンライン上での見知らぬ人との交流、クラス会などのイベントやサークルのオンライン新歓への参加、そして対面での交流に至るまで、これらに参加するためには学生たちが自ら積極的に動くことが必要とされた。

そのため、コロナ禍の厳しい状況にありながらも自主的に活動してなんとか自らのコミュニティを構築することができた学生と、そうではなく依然孤立状態にある学生との間には大きな分断が生じてしまった。