精読『学生相談窓口の拡充と保健診療所における一般診療の終了について』

精読『学生相談窓口の拡充と保健診療所における一般診療の終了について』

学生診療所の閉鎖発表

12月1日、京都大学は桂・宇治・本部に設置されている京都大学保健診療所を終了するという通告を発表しました。この通告は利用者や関係者への事前の連絡・相談なく診療を終了するものであり、特に神経科初診受付を1週間後の12月8日に終了するという非常に唐突なものでした。初動については京大保健診療所の存続を求める会による『京都大学保健診療所を廃止しないで下さい』が詳しいです。

改組方針の発表

関係各所への働きかけのおかげで、精神科の12月8による初診受付終了は撤回され、当面の間診察を受け付けることになりました(通告)。しかし、12月1日の文書では明らかにされてこなかった来年度以降の体制について、12月8日に「学生相談窓口の拡充と保健診療所における一般診療の終了について」が発表されましたが、この改組方針は多数の問題点を孕むものでした。

以下、本文を詳しく読んでいきましょう。

令和3年12月8日

学生・教職員各位

学生・環境安全保健担当理事    村中 孝史

環境安全保健機構長        吉﨑 武尚

学生相談窓口の拡充と保健診療所における一般診療の終了について

令和3年12月1日付け「京都大学保健診療所(吉田・宇治・桂)の診療終了について」にてお知らせしていることについて補足します。
保健診療所については、従前より、健康保険等を使用することができない、そのため安価な治療薬しか処方しない

→健康保険を使用できないことによるデメリットが存在することも確かに事実です。その一方で親の反対で通院が困難な者や留学生などにとっては、健康保険を使用せずとも安価な治療が受けられるメリットは大きく、保健診療所はその役割を多分に担ってきました。

また、医師数に限りがある、そのため十分な数の診療科や診療時間を提供できない、といった問題を抱えてきました。

→この問題は実際に存在します。しかし、後段で述べられているように、多くの民間医院が存在し、それらを利用する学生が多いとするならばこれは比較的問題としての程度が軽いと言えるでしょう。

他方、京大近辺には多くの民間医院が開設されるに至っており、現在は、それらを利用する学生の皆さんも多いことと思います。こうした事情から、保健診療所の利用者は著しく減少した状態が続いています。

→どのように需要が変動しているか、もう少し説明が欲しいです。

私の友人複数人が神経科に通っているのですが、いつ行っても混雑しており、よく待たされると口にしています。このことから保険診療所の需要が決して低くないと推測されます。また、「保健診療所の利用者が著しく減少した状態」という文面に対して懐疑的な印象を受けます。

これに対し、メンタル不調を訴えてカウンセリングルームを訪れる学生の数は増加しています。

→全くもってその通りです。学生に対するメンタルケアの需要は増大しています。

本学としては、こうした事情を踏まえ、各キャンパスに学生相談窓口を設置し、学生相談体制を拡充する一方、利用者の減少している保健診療所における一般診療は終了することとしました。

→「相談窓口」と「医師による診察」は大きく異なります。たとえ需要が減少していたとしても、その医師による診察の需要の中身を精査する必要があります。

保健診療所を利用してきた学生の皆さんにはご不便をおかけすることになりますが、人員や予算に限りがある中で、できるだけ学生の皆さんのニーズにお応えするための措置ですので、ご理解ください。

→学生のニーズを考えたとき、「代替可能性」という点が浮上してきます。詳しくは後段で述べますが、大きなニーズがあったとしても供給量が多いものより、小さなニーズであってもそれが替えの効かない供給である場合があり、(特に医療において)そのようなニーズに応えることは重要です。

通知のとおり保健診療所における一般診療は終了しますが、これまでの保健診療所は健康管理室と名前を変え、環境安全保健機構に所属する医師、看護師により学生・教職員の皆さんの健康診断、各種特殊健診、健康診断書の発行、応急処置等を続けます。

→学内で一般診療を受けられる環境はそのハードルの低さなどから非常に重要なものです。せっかく学内に医師・看護師を配置し続けるのですからこそ継続できないものでしょうか。

また、令和4年4月には、学生総合支援機構(仮称)を設置し、上述したように各キャンパス(吉田本部、北部、吉田南、桂、宇治)に学生相談窓口を整備します。相談窓口では、学生の皆さんからの多様な相談に対応する予定ですが、特に、相談員として臨床心理士や公認心理師の資格を有する相談員(カウンセラー)を配置し、メンタル不調に関する相談への対応を強化します。

→カウンセラーによるケアはもちろん重要ですが、前述の通り医師の医療行為とは大きく形が異なるものです。

また、各相談窓口で医師の診断が必要と判断された場合には、精神神経科医の診断を受けることができるようにする予定です。さらに、継続的な治療が必要な場合は、学生の希望および精神神経科医の判断により専門的医療機関を紹介します。

→民間の精神科は、需給バランスから非常に過密で、予約が取りにくいという特徴があります。また、必要性を判断する段階でも遅延が生じます。これらの時間はメンタルケアにとって非常に命取りであり、予約不要でその場で医師の診断が受けられる保健診療所の精神科は細い需要であれど代替の効かない極めて重要なものでした。

なお、先の通知では、12月8日に精神神経科の初診受付を終了することとしていましたが、できるだけシームレスに新体制への移行ができるよう、12月8日以降も当分の間、初診の受付を継続しますので、受診希望の方はご利用ください。新体制への移行スケジュールの詳細については、追ってお知らせいたします。

→医療、特にメンタルケアの分野において先の見通しは非常に重要です。「当分の間」ではまた同じような唐突な案内に怯えながら暮らす必要があります。時間的に余裕を持った告知が必要です

本学は、これからも全ての学生・教職員が心身とも健やかに勉学・就労に励めるよう支援を行っていきますので、よろしくご理解ください。

以上

→そのために対話しましょう。

まとめ

これまで保健診療所は以下のような医療を一手に担ってきました。
・健康保険を前提としない安価な医療の提供
・医師による(フローの単純で迅速な)診察
今回の変更で掬おうとしている需要は民間の医療機関で十分対応可能なものであり、その裏でこの変更は診療所の需要のうち代替不可能な部分を破棄しようとしています。

診療所機能の存続へ支援よろしくお願いします

現在診療終了反対に賛同する声を集めるため、次のリンクから署名を集めています。診療終了に反対される方はぜひご参加ください

<参考>

保健診療所問題の現状を知りたい!

京都大学保険診療所を廃止しないで下さい-千万遍石垣

精読『学生相談窓口の拡充と保健診療所における一般診療の終了について』-千万遍石垣

京大保険診療所の存続を求める会公式サイト

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京大保険診療所の存続を求める会公式twitter

京都大学職員組合 「保険診療所診療終了の見直しを求める要請」

京大保険診療所の存続を求める会 「要求書」

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