目次
はじめに
この記事は、Kumano dorm. (2nd)Advent Calendar 2021の6日目の記事です(未だに枠が余ってたので)。
北海道サイコロキャラメルの旅は今年の3月に8日間(最初と最後の2日は半日づつの丸7日間)タイヤを転がし続けた行先のないドライブである。旅の終わりに簡単なまとめは行われたが、今まで全体を通しての総括を行えていなかったので、ちょうど一年くらい経った今総括していこうと思う。旅の詳しい様子はtwitterに随時投稿していたので併せて一読いただけると嬉しい。
参加者は当時北大航空部所属の3名、免許を取得してから北海道において数年運転経験を積んできた運転者(先輩、当時3年生),若葉マーク付きの運転者(私、当時1年生),免許なしのお話し要員(部活同期、当時2年生)それぞれ1名づつである。
計画・概要
そもそもの発端は前年11月末に私が先輩とご飯を食べに行ったときに唐突に先輩から北海道179市町村サイコロキャラメルを使ったドライブをしたいといわれたことである。いや、正確には先輩の中では前から構想があったのだろう。このサイコロは5面に任意の北海道の自治体名が書かれており、どこに飛ばされるか分からない点がドライブに最適であるという話になった。別の記事に書いたがこのとき私は仮面浪人中である。私にも先輩にも受かる(受からせる)気が全く見られない。
その後も何回か先輩の家や大学近辺の飲食店に呼び出されて企画の詳細を詰めていった。
結果として今回採用したルールは以下のとおりである。
・期間を8日間(丸7日)とする。これまでに帰ってこられなければゲームオーバー
・使用するサイコロは1箱分25個(=125市町村)
・サイコロは半無作為的に抽出する(後述)
・使用したサイコロのキャラメルは残さず食べる
・札幌を始点,終点とし、目的地に着いたら区別がつかない状態でサイコロを1つ選択、サイコロを振り、出た目の市町村を次の目的地とする
・目的地はその市町村に位置する道の駅や鉄道駅,観光地などとする
・札幌を含むサイコロを選択しかつ札幌の目を引き終点に帰ることでゴールとする
・札幌を含むサイコロ以外は、一度使用したら除外する
・札幌を含むサイコロを選択したときは、その後このサイコロのみを使用する
・札幌を含むサイコロで札幌以外の目を引いたときも、目を除外せずに使用する
・高速道路の使用については禁止をしないが極力使用しないよう努力し、なるべく同じ経路を通らないよう努力をする
すなわち、可能性は低いが札幌のサイコロを永遠に振り続けるということもあり得るルールだった。
サイコロの抽出に当たっては以下の制限をつけた
・サイコロの重複がないようにする
・札幌を含むサイコロを一つだけ入れる
・離島にある4町村(礼文町,利尻町,利尻富士町,奥尻町)それぞれを含むサイコロを一つづつ入れる
その他5面すべての自治体がほぼ隣接している等目に余って面白くなさそうなサイコロは除外した。
因みにこの7日間という期間は今回借りた車の返却期限に規定されており、様々なルールはこの日数に合わせるように計画されたものである。計算の詳しい過程は下の通りである。
下図は上のルールに則った場合の試行回数ごとの帰札確率をグラフにしたものである。この場合において帰札するまでに引く市町村数の期待値は22となっている。
次に、この場合の走行距離について、まず北海道のスケール感から適当に2地点を抽出したら300kmくらいだろうと考えた。帰札できるときの試行回数における期待値が22回と計算されたため、22×300=6600kmが今回走る距離と計算される(スプレッドシートの値と距離が違うのはなんでだろう)。平均速度はこれまでのドライブ経験から30〜40km/hが妥当と考え、今回のノンストップドライブの性質から40を選択。因みにこの場合1日平均の走行距離は960㎞ということになる(白目)。
6600㎞を平均時速40で割って日数にすると6.875=7日弱となったためこの案を採用。
以後ゲーム開始の昼の12時を基準に日数の計算を行う。
一日目(奈井江,北見,北竜,日高,士幌)
春休み中に開催することとなったが、わたしの大学受験の関係から3月も終わりの方に日程が設定された。出発時刻は12時とイレギュラーな時間(北大航空部の限界ドライブは基本早朝発)だったが、これは私が京都から飛行機で帰ってくる時間を考慮してのものであった。実際には私は前日の飛行機で帰札できていたので結果的には12時発でなくてもよかった。
札幌の地点として北大の南門を設定し、ここで一つ目のサイコロを振った。一つ目の目的地は奈井江町であった。札幌から71㎞である。引いたときはめっちゃ近いじゃん、と思ったがこれは既に北海道感覚である(前述の先輩の計算では北海道の任意の都市間の距離の平均を300㎞と仮定している)。次に引いたのは北見であった。北見といえばオホーツク第一の都市、そこそこ遠い。このようにして初日は奈井江,北見,北竜,日高,士幌の5か所を回った。
因みに日高と言えば日高昆布で有名な海沿いの自治体としてイメージする者が多いと思うが、この日高には飛び地があり今回は飛び地の方にある「道の駅樹海ロード日高」を日高の目的地とした。さらに言えば北見の目的地として訪れたのは「道の駅おんねゆ温泉」であるが、これは北見市留辺蘂に位置し、地図上でわかるように平成の大合併で北見市に吸収された北見市街からかなり距離のある道の駅であり、人によって評価が分かれるとされている。
総走行距離は762㎞。ここまでに札幌を引く確率は12%であった。
二日目(増毛,上ノ国)
士幌から近いので昼ご飯とおやつを兼ねて六花亭の帯広本店に向かう。しかしコロナの影響(だったはず)で喫茶室は営業しておらず、近くの西三条店に向かった。この後の車中で第二外国語の選択をした記憶がある。基本的に全体としての睡眠休憩を取っていなかったので一日の大半が車中の生活で、大学入学の準備を落ち着いてやっている暇はなかった。夕食は、その時間帯に増毛を引いたのでそこそこ高級な寿司を食べた。
ここで私が重大インシデントを起こす。増毛からオロロンラインを伝って札幌方面に南進していたのだが、このときここでは強い雨が吹きなぶっていて視界が非常に悪かった。ハイビームとロービームを切り替えながら見やすいライトを探して走っていると助手席の先輩から一言「反対車線走ってない?」たまたま対向車がいなくて助かったものの、対向車線を数百m爆走していたのである。今思い出しても恐ろしい。ホワイトアウトとまではいかずとも視界が悪い時の運転には細心の注意を払いたい。
そんなこんなで札幌を通過して目的地上ノ国に向かった。既に皆限界が近くなっており、札幌市に入ったときには札幌市街にハンドルを切りかけた。実際、この後先輩の運転が続いたが、朝になり私が睡眠休憩から目覚めると車が右側の路肩に停車していた。理解が追い付かなかったが、寝起きだったからという理由だけではないだろう。
上ノ国に到着後は、せっかく道南に来たということで函館のソウルフード“ラッキーピエロ”を食べに七飯にある峠下総本店に向かった。私は初めてラッピに来たので王道のNo.1セットを頼んでチャイニーズチキンバーガーを食べた。美味しくてうれしくなったので幸運の鐘を鳴らしたところ、幸せの波動が宇宙から舞い降りてきた(店舗公式)。同じ道南と言っても道程で71㎞、やはり北海道感覚である(お前いつも本州で京都から80㎞ある山岡家行っとるやんけ エーッ はい わかりました)。
二日目に回ったのは増毛,上ノ国の2か所のみであった。走行距離は744㎞。今までに回った市町村は7か所で、ここまでに札幌を引く確率は20%であった。
三日目(初山別)
上ノ国で引いたのは初山別、増毛から上ノ国に来た時に通ったオロロンラインをひたすら北上した先にある村である。この時点で既にダルい。しかし、さらにその初山別で引いたのは函館であった。いやさっきラッピ食べに行ったところやん。
流石に先ほど同様すべて日本海側から回るとダルすぎるので札幌の中山峠から太平洋側に抜けて南進した。この時点で札幌を通過してもそのまま帰ろうという元気すらなかった。
遠すぎて結局三日目に回れたのは初山別のみであった。走行距離は850㎞。今までに回った市町村は8か所で、ここまでに札幌を引く確率は24%であった。
限界道南単振動は始まったばかり。
四日目(函館)
またしても私がインシデントを起こす。洞爺湖で温泉休憩を挟んだのだが、このとき後部座席は下足厳禁になっており、駐車場に靴を脱ぎ棄ててきてしまったのだ。発見してくれた方は駐車場にぽつりと置かれている靴を見てさぞかし不思議に思われたことであろう。
函館では、せっかく函館に来たのだからと北大函館キャンパスとラッキーピエロ港北大前店,函館山展望台,八幡坂に向かった。いやさっきラッピ食べたやん……
函館山でサイコロを振ったが、またしも激ヤバ目的地を引いてしまう。標津であった。野付半島がある町で函館からの距離は745㎞、正に桁違いだ。結果として今回のドライブで最長の都市間距離となった(じゃないと困る)。
勿論この日のうちに着くわけがないので四日目に回ったのは函館のみとなった。走行距離は824㎞。今までに回った市町村は9か所で、ここまでで札幌を引く確率は28%。
五日目(標津,様似)
折角なので野付半島に向かった。湾の内側と外側で海の色が違ったのが印象的であった。ここで引いたのは様似、襟裳岬のえりも町の隣の町である。これは全く問題ないのだが、次に引いたのが知内。大問題も大問題、三度目の道南である。ここで三人ともやる気をなくし初めて宿泊施設を利用することを決意した。やはり動いている車とは寝心地が違う(それはそう)。明朝広尾町のホテルを出発した我々は、今までで道南に接続する主要な道はすべて通ってしまっているので今回最初で最後となる高速の使用をした。
五日目に回ったのは標津と様似。走行距離は683㎞。タイヤを止めて睡眠をとったため少し短めの距離となっている。今までに回った市町村は11か所で、ここまでで札幌を引く確率は36%。
六日目(知内,栗山,喜茂別,南富良野)
知内に到着し、折角道南に来たのでラッキーピエロベイエリア本店に向かった。いやさっきラッピ食べたやん……
ここらで主催者の先輩以外の二人が音を上げ始め、札幌の目を含むサイコロは札幌以外の目を引いた場合これを除外することを提案した。というより私なんかはてっきりそういうルールだと思っていた。読者はどうでもいいと思ってるかもしれないが、このルール変更は非常に重要な問題である。改定前は無限に終わらない可能性があったのに対して改定後はどんなに運が悪くても29回サイコロを振れば札幌に戻れる。これに対応して確率計算も変更になり、帰札期待値も22から15へと大幅に小さくなった。なお、日ごとに記している“札幌を引く確率”はこのルール改定後の確率であることをことわっておく。
ここから栗山,喜茂別と札幌近郊の都市を周りルール改定も相まって三人のモチベーションが取り戻される。次に引いたのは南富良野。遠いはず(喜茂別から193㎞)なのだがもう道南三往復で感覚がバグっているのでかなり近く感じる。
六日目に周ったのはこの3都市。走行距離は1078㎞。今までに回った市町村は14か所で、ここまでに札幌を引く確率は48%であった。
七日目(芽室,幌延,白糠,羽幌,札幌)
最終日である。芽室,幌延と周り、ここでようやく札幌を含むサイコロの選択に成功した。しかし、引いたのは白糠。そんなところに向かっていてはレンタルしているADバンの返却に間に合わないし私は引っ越しの準備が全く進んでいない状態でヤマトを迎えることになってしまう(ドライブが終わった次の日に引っ越しの荷物出し)。仕方がないのでここでゲームオーバーとして初めての引き直しを行った。引いたのは羽幌、ちょうど札幌に戻る道中なので羽幌を引いた世界線を進むことにした。羽幌の道の駅に着いた時には先輩は疲れ果てて爆睡していたので、一応ゲームオーバーという扱いにしてるし無理に起こすのは可哀そうだと早々に起こすのを諦めサイコロを引いた。後でtwitter上でブチギレられてしまったが、まあ当然といえば当然だと帰ってから反省する。一投目は北海道マス(ハズレ)だった。気を取り直して二投目、羽幌。一度引いている目なのでもう一度引き直し、ここで札幌を引くことに成功した。あとはもう脳死でタイヤを転がすだけ。午前5時半頃に北大南門に帰着し、ゴールとした。
七日目に周ったのは芽室,幌延,羽幌,札幌。走行距離は681㎞。今までに回った市町村は18か所で、ここまでに札幌を引く確率は64%であった。我々は18回の試行でゴールできなかったのでこの確率からあぶれたということになる。
まとめ
使用したサイコロは17/25個。引いた市町村は18市町村(白糠をカウントしていない)で通過したのは131/179市町村。総走行距離は5624㎞。一日平均にすると803㎞。
800㎞という距離はだいたい東京から福岡や北海道までの距離で、5600㎞は直線距離でアラスカやオーストラリアに到達する距離である。5000㎞といえば乗用車で半年~一年に一回のエンジンオイル交換の目安とされている走行距離である。そういえば借りた車の前のオイル交換はいつだったんだろう。。レンタカー屋もまさか1週間貸しただけで5000㎞も走られるとは思ってないだろうからオイル交換の時期を大幅に超えた走行をしてしまっててもおかしくないんだけど大丈夫だったのだろうか、、
感想、反省点など
・今回のように基本的に睡眠のためにタイヤを止めないドライブをするときには、睡眠環境とドライバーの数を考慮すると3人乗りが最適であった。
・ノンストップドライブ前提で一日960㎞走る計画は、今回の丸7日間という長さを考慮すると無謀であった。
・出発時点のルールでの訪れる市町村数の期待値22を考慮すると2回くらい道南を引くことは十分に予想できた(ような気もする)。結果として上ノ国を引いたときに近く(笑)の函館まで足を延ばしたのは悪手であった。
・サイコロの出目と引き順から今回はオホーツクの沿岸を走ることができなかったのが残念であった。
・ラッピはハンバーガーからカツ丼までメニューの幅が広いので食べる分には飽きないが、店の”味”が濃すぎてラッピ初心者には情報量が多く疲れた。
・最も多く訪れたコンビニはセブンイレブン上川町店で計3回であった。無料高速のインターのすぐそばにありとても立地的に優れている。
・私は免許取得が前年の夏であり自分の運転に自信がないところがあったが、一週間の限界ドライブを経験することによって圧倒的な成長を得ることができた。
北海道という土地は広大でかつ走りやすいので、どうしても我々を限界ドライブに駆り立てる。今回私達が行ったのと同じ趣旨のドライブを計画する人間は必ず出てくると思うので、この総括がその時の役に立てば嬉しい。