札幌時計台をご存じだろうか。日本三大がっかり観光名所などと揶揄されることもある札幌都心にある高さ20mの木造の時計台である。この時計台は北海道大学の前身である札幌農学校の演武場として造られたものであるが、農学校の移転に伴い札幌市に受け渡され、今では資本主義の際限ない経済成長を志向する姿の表象であるところの高いガラスのビルに囲まれ、日本三大がっかり観光名所などと辱しめを受ける始末である。がっかり観光名所とは何だ。当事者意識を持たずして消費の対象として大学を観光地化する人民の資本主義的な姿勢が今の札幌時計台の惨状をもたらしているということを忘れてはならない。札幌時計台こそが、大学から自治を奪い、資本主義の論理に取り込む国策による弾圧を真っ先に受けた生ける証人である。
この札幌時計台に対する弾圧の極致が、「味の時計台」を名乗り時計台を標章に用いるラーメン屋を全国に展開する資本家が野放しにされていることである。
これは国策による弾圧であるからして北海道大学だけの問題ではない。京都大学でもいつ「時計台どすえ」を名乗るクスノキと時計台の標章のおばんざい屋による弾圧を受けるともわからない。「味の時計台」弾圧を受ける北海道大学は今では総長選で学内にホテルを誘致すると宣う資本の手先が総長に選出されるほどに資本主義に迎合してしまい、大学自治の面影もない。これが時計台を防衛しなかった場合の京都大学の未来であるということに留意する必要がある。
今こそ北海道大学に連帯を表明し、これ以上の国策による大学自治への弾圧を許さない全国的な運動を組織していかなければならない。札幌時計台を学生の手に戻すことはその第一歩である。地理的に分断された京都の我々はこの運動に対してどのように連帯していくことができるであろうか。まずは「味の時計台」などという資本主義の横暴に怒りの鉄槌を下すことだ。「味の時計台」を打倒し時計台を資本家の手から自由にすること抜きにして時計台が学生の手に戻ることはない。
かくして我々は先日12月5日に「時計台占拠」を決行した。
味の時計台の最寄りの店舗は香川県は瀬戸大橋のたもとの宇多津にあり、半端な気持ちで向かえる距離ではない。そこで我々はまず味の時計台占拠の意を固めるために京都大学の時計台に向かった。そこで目にしたのはバリケードによって正面を固められた時計台の姿であった。更には、今回占拠に参加せずに京都に残った同士からの報告によると昼には正門前に警察の機動隊車両が3台詰めかけたうえに警察官が門前に整列し異様な雰囲気に包まれていたようである。京大当局が京大の時計台を占拠されると考えバリケードを張ったうえに警察導入をしたとしか考えられない。道中でこの報告を受けた我々は大学自治を投げ出し警察権力と結託する京大当局の姿勢に今回の占拠に向けた怒りを新たにし、一刻も早く時計台に着けるようにと全線高速使用を決意したのたが、京大当局や警察権力はいささか浅慮であると言わざるを得ない。今回の企画広告にはラーメンの絵が描かれているうえに「AJI NO TOKEIDAI」と明記してある。今回の時計台占拠が北大に連帯した札幌時計台奪還運動の一環にあったことは疑いようがないであろう。
京大に弾圧が集中したことにより我々の時計台占拠はつつがなく進んだのではないかと思われるかもしれないが事はそう簡単には運ばなかった。寮祭期間中は交通権力による取り締まりの強化によって我々の戦力を削ぐことを画策する弾圧が行われていることは周知の事実であるが、我々にも交通権力の卑劣な取り締まりの魔の手が迫っていた。今まさに明石海峡大橋を渡らんとする時であったが、先を急ぐ我々は黒光りするクラウンアスリートを右側からすっと追い抜いた。私服警官よろしくあまりにも怪しいその装いに運転席を覗き見ると、なんと運転しているのは青色の制服と白色のゲバヘルに身を包んだ交通権力ではないか。覆面で身を隠しながら我々を検挙して時計台を奪取せんとする我々の道を塞がんとするなど何たる暴挙かと怒りに身を震わせながらも道半ばで足止めを食らっていては仕方がないので苦汁を嘗める思いで大人しく走行していたら、我々に連帯する黒色のヴォクシーが勇敢にも制限速度を優に30km/hは超えるのではないかという速度で走り抜けて我々の身代わりに覆面パトカーに検挙されていった。かくして我々は彼らの熱い連帯に心を震わせ、骨は必ず拾おうと決意しながら先の道を急いだ。
そうして我々が味の時計台に到着したのは14時半のことであった。宇多津の地に寮旗をはためかせて時計台を占拠しに向かうと、そこには資本家と結託した警察権力の姿はなく、非常に牧歌的に時計台を占拠することに成功した。時計台を占拠した記念に写真撮影を終えると、味の時計台資本に労働を強いられている労働者と連帯し、時計台を学生の手に戻すことを確認して時計台コンパを開催した。時計台労働者は我々の運動に非常に強い理解を示し、我々が一人あたり最低800円のカンパを支払うことを確約するとラーメンとご飯、餃子などを無料で提供し我々を歓迎してくれた。
今回味の時計台の占拠を貫徹することができたが、これは札幌時計台を学生の手に戻す運動のほんの一歩目に過ぎないし、その後にはそこから運動を広げて資本主義に迎合した北大当局を打倒し、全国的な運動をもって大学自治・学生自治の地平を再び切り拓く展望を持つことを忘れてはならない。