不定期連載企画 京大の光と影 第一回「熊野寮自治会確約破棄(団交)」

不定期連載企画 京大の光と影 第一回「熊野寮自治会確約破棄(団交)」

こんにちは。近年の京都大学をめぐる問題をトピックごとに説明する不定期連載企画、「京大の光と影」。第1回のテーマは「熊野寮自治会確約破棄(団交)」についてお送りします。

今回は、京都大学前副学長が「悪びれることなく公然と約束を破った」ことについて解説していきたいと思います。大学の上層部の人間がまさかそんなことをするわけがない、どうせまた過激派が何か言っているだけだろう、と思われるのも無理はないかもしれません。しかし、信じられないかもしれませんがここに述べられる事は全て事実です。

前副学長の約束破りについてお話する前に、まず熊野寮自治、次に団体交渉についての説明が必要になってきます。少し難しい話になりますが、頑張って説明しますので是非最後まで読んで頂けると幸いです。

熊野寮の自治について

 京都大学熊野寮は1965年に開寮された、京都大学の学生寮です。最初は大学が管理する寮でしたが、現場を知らない大学の運営陣が勝手に寮のことを決めると寮生に不利益が被られる可能性があります。そうならないためには、寮にすむ学生が自分たちで寮を管理するのが望ましいです。寮生と大学が交渉することで、寮生は自分たちで寮のことを決めることになりました。この、「自分たちのことは自分たちで決める」運営方針が「自治」というものなのです。「自治」を行うため、熊野寮は「熊野寮自治会」という団体が主体となって運営されています。

団体交渉について

 熊野寮自治会は昔から、京都大学執行部(学生以外の京大の構成員)と話し合いを行う際に、学生側は集団で話し合う場に参加するという手段がとられていました。これを「団体交渉」と呼びます。

実際に寮に住んでいる寮生が団体交渉に参加することはもちろん、国立大学の福利厚生施設としての寮の側面を考慮すると、一般市民も話し合いの場に参加できるようにすべきです。

このような考えに基づき、寮生以外の学生や地域住民まで誰でも参加できる完全公開の交渉の場が求められています。そして、その公開性が公正さを担保しているのです。

確約について

 団体交渉の成果として、熊野寮と大学当局との間には「確約」と呼ばれる約束事が結ばれました。「確約」の内容は、「大学は寮自治会の了承を得ずに勝手に寮のことを決めない」ことや「寮に関する重要なことに関しては計画の段階から寮に確認を取る」といった寮のことを大学当局に勝手に決められないようにするものなどです。

あくまで確約は寮自治会と京都大学当局との間の組織の約束ですが、形式的に副学長が確約書にサインすることになっていました。そのため副学長が新しくなったときに、「これまでの副学長は確約を引き継いできたが、私は引き継がない」というようなことを防ぐために「これまで寮と大学当局に結ばれた確約は次の副学長になっても無条件で受け継がれる」という確約も結ばれています。

 事実、2014年以前においては、熊野寮自治会だけではなく、吉田寮自治会や職員組合を含めた学内の様々な団体が当局と団交をしていました。そして、その成果として時代に合わせながらその時々により修正しながら、確約を引き継いでいました。

大学の暴走

 しかし、2016年に副学長が杉万副学長から川添副学長になったのを期に、川添副学長は「これまでの副学長は確約を引き継いできたが、私は団交はやらないし、寮自治会に決定権をなくす形の確約しか引き継がない」という旨を伝え、団交の場に現れることはありませんでした。確約は、大学当局と寮自治会との間の約束事であり、形式的に副学長が確約書にサインするだけで、例えサインしなかったとしても自動的に引き継がれます。このことや団体交渉を行うことは、確約に記されていることです。確約を無視し、一方的に決定を押し付けるその姿勢は、「対話を根幹とする自学自習」を教育理念とする京都大学の運営陣としてあってはならないものです。学生が何度も何度もこのことについて抗議したにも関わらず、川添副学長は確約書にサインするどころか、団交の場に現れることすらありませんでした。

 川添副学長が任期を終え、村中副学長が現在に至るまで副学長を務めていますが、寮生が団交や確約の引継ぎを求めるも拒否されています。

わかりやすくいえば川添前副学長は悪びれる様子もなく「公然と約束を破った」ということです。組織の上層部の人間が変わっただけで方針が対話なくコロコロと変わるなど、民間の企業ならまだしも、国立大学という組織においては考えられない話ではないでしょうか。

昨今では、「寮食の提供期間短縮」「熊野寮食堂の厨房員補充停滞」など一方的に京都大学執行部から決定をされており、寮生が不利益を被るという自体が発生しています。

今回はここまでとします。京大には他にも様々な問題があるので、随時公開していきたいと思います。