宝池教習所シリーズ2「みきわめ教習」

宝池教習所シリーズ2「みきわめ教習」

 

 

私はみきわめ教習が苦手だ。

みきわめ教習とは、修了検定(1段階)と卒業検定(2段階)の前にそれぞれ1回ずつ行われるもので、検定を受けのるに十分な技術があるか教習官に前もってチェックしてもらう時間のことである。
そこで教官のOKがでれば、検定を受ける資格をもらえるのだが、もしOKが出なければ、ありがたくも追加料金5400円を払って補習を受けることになる。

まぁ、ようするに一言でいえば、検定前フィルターのことなのだが、どうやら宝池フィルターは私を察知するのが上手らしい。
不合格とおされた教習原本のプレゼントと共に、毎回私は彼の上に取り残される。

初めてのみきわめ教習の日、わたしはそもそも、その日がみきわめの日だと知らなかった。
いつものように車の中でのんびり待っていると、乗り込んできた教官が一言、
「コース確認してきた?」


…ハテ?
コース確認とはなんの御用でしょうおやじさん?

と、なぜか江戸っ子風のわたしだが、今日はいったい何の日だっけ?そういや、たしかに前回の教習でコース確認してきてみたいな事を言われたような気もするけど…
すると、隣に座った教官もわたしの江戸っ子風アホ面につられてか、

「おっじょうちゃぁ~ん、
ナァニ言ってるんだい、アンタ今日はみきわめだろう?
まっさか忘れちまったなんてこたァねェだろぉなぁぁ~?」

と、気前よく江戸のおじさん風くちぶりで返答
してくれるわけもなく、もちろんわたしがコースを確認しているわけもなく、そしてそんな日に限って前回の授業からだいぶ時間が空いていたりして、わけもわからぬまま、みきわめスタート。
後方確認は忘れるわ、指示器のタイミングは遅いわ、右左折時によせるの忘れるわで、散々な結果であった。

もちろん結果は不合格。

その後、車の中で手渡された教習原本を手にトボトボと受付に戻り、しょんぼりと5400円を券売機に投入している江戸っ子娘の後ろ姿は、
なんとも言えぬ哀愁を漂わせていた。


その後、再チャレンジ2回目のみきわめでは、無事にフィルターをくぐりぬけることができた。

修了検定では、みきわめに落ちたトラウマから当日の朝、誰よりも早く教習所に到着し、3つの検定コース(どれか一つを走ることになる)を建物の上から念入りに確認し、さらにその後、教習所内の3つのコースを実際に歩いて確かめるという念には念をいれた準備をした。

また、わたしの念入りな準備は学科試験にも及び、インターネットに掲載された過去問を10年分ほど解き、さらに自分が苦手だと思う分野を集中的に復習するという、受験生顔負けの、いや顔負けどころか、10月という時期を考えれば顔勝ちしているかもしれないくらいの切実度で勉強を重ねた。

結果は一発合格。

その後、受付で渡された仮免許証には、
まるで修了検定までの努力がにじみ出ているかのように、顔色が悪く、目の下が白目になっている私が写っていた。

なんだか感慨深かった。

 

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