小学生の時、お姉ちゃんが読んでた名探偵夢水清志郎シリーズ。
図書館で借りたのか、姉の部屋にはこの本がよく置かれてあった。
娘と一緒の話題ができて嬉しいのか、お父さんまで姉の借りてきたそのシリーズをトイレに持ち込んで読んでいた。
そんな2人を見ていたわたし。
きっとわたしにはまだ早いんだろうなぁと無意識に思い込むようになっていた。
それに加えて、わたしはその表紙の絵が苦手だった。
そのため、お姉ちゃんと同じ年になってからも、わたしがそのシリーズに手を付けることはなかった。
だが、そんなわたしにも、それが思い込みだったと気付く時が訪れる。
その日、わたしはあまりにも暇だった。
ゲームやテレビがあまり喜ばれないわたしの家では、暇つぶしでできることが本を読むくらいだったのだが、
生憎なことに、家にある本は大体読んでしまっている。
同じ本を読む気にもなれず、アァーアァーと本棚のところでうだうだしていると
一つの本が目に入った。
『あやかし修学旅行 ~鵺のなく夜~』
そう、あのシリーズである。わたしの苦手な名探偵夢水清志郎シリーズ。
今までのわたしなら目に留まっても気には留めず、そのまま本棚に返していたところだったが、その時の新しい本を読みたい!欲求は、嫌悪感を払拭するほど強く、わたしはそれほどまでに暇を持て余していた。
どれどれ、ちょっと読んでみるか。
手に取ってみる。
手に取るだけではなく実際に読んでみる。
…面白い!!
一瞬で世界に引き込まれた。
子どもがテレビの前でくぎ付けになるみたく、わたしは一瞬でその本にくぎ付けになる。
すごい、主人公の女の子も夢水清志郎も、出てくるキャラクターが頭の中で本当に生きてるみたい!
そうして、その日から
わたしの暇つぶしのお供に、名探偵夢水清志郎が加わるようになった。
学校の図書館でそのシリーズを見つけては、とにかく順番関係なしに読み進めていった。
しかし、暇つぶしのお供といっても、夢中になった本というのはすぐに読み終えてしまうもの。
出ている全てのシリーズを、あっという間に読みつくされてしまった名探偵夢水清志郎は、早々にお暇のお供を解任され、わたしのお供は新たな本に移っていったのだった。
しばらく時間が経ち、わたしは小学六年生になった。
中学受験の準備がいよいよ本格的になってきた。
夢水清志郎シリーズと出会った時からも、しばらく時間が経ち、わたしの本の趣向はいわゆるティーンエージャーと言われるようなものに変わりつつあった。
そんな時、本屋で見つけたのだ。
『卒業 ~開かずの教室を開ける時~』
黄色い文字で大きく書かれた「卒業」という文字。
その文字の下では、あの見慣れた懐かしいキャラクター達が笑ってこっちを見てる。
えぇ!このシリーズ終わっちゃうの!!
そう、それは、あの時のお供、夢水清志郎シリーズの最終巻だったのだ。
サザエさんみたく、ちびまる子ちゃんみたく、この子たちの時空も止まっているのかと思っていた…
久しぶりに新刊を目にした興奮と、それが最終巻であるという衝撃。
それらが混じりあいながら、わたしはすぐ近くにいた母に「これ買って!」と叫んだのだった。
「卒業」と名打たれた本は世の中にあまたに存在するが、
名探偵夢水清志郎シリーズの「卒業」という文字が与えた衝撃と感慨深さは、その中のどれよりも強いだろう。
宝池教習所シリーズ第三弾。
「卒業」
2回しか発行していない、中身もたいしたことない宝池教習所シリーズであったが、
そんなシリーズも、夢水清志郎の300分の1くらいの衝撃は与えられたのではないかと
わたしは見ている。

長らくのおつきあいありがとうございました。
ほとんど教習所のことは書いてありませんでしたが、これで一応教習所シリーズはおしまいです。今後もこのようなゆるい投稿をしていく次第なので、またその時お会いしましょう。